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東京高等裁判所 昭和26年(う)216号 判決

控訴人 被告人 塩原禎三

弁護人 高瀬太郎 外二名

検察官 中条義英関与

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金弐万円に処する。

右罰金を完納できないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人及び原審相被告会社三共株式会社の平等負担とする。

理由

本件控訴の趣旨は末尾添附の弁護人井本台吉、同高瀬太郎、同三輪寿壮各名義のいずれも控訴趣意書と題する各書面に記載の通りである。これに対して次の様に判断する。

高瀬弁護人論旨第一点に対して。

原判決が単に労働者に対して賃金を払わなかつたという形式的事実を以て本件の犯罪とは認定せず、本件当時の被告会社の経済状態のみならず、本件賃金不払を生ずるに至つた過程につき、昭和二三年初頭からの経済界の状況及び被告人禎三の会社経営、賃金対策等の処置、延いては、原審相被告会社の経理状況を綜合観察すると、本件賃金不払が止むを得なかつたものとも、其の支払が不可抗力に基く不能のものであつたとも認められないし、被告人禎三に本件賃金支払を期待することが不能であつたとまで云うことができないとしたことは原判文上明白である。従つて原審は本件賃金不払については被告人禎三に相当の責任があつたものと認めたものと解するを相当とする。従つて被告人の原判示行為について期待可能性なく、又違法性も阻却せられるという所論は本件においてはその事実上の根拠がないから、これを認め得ない。又援用にかかる判例はいずれも本件に適切でない。原審相被告会社と原判示労働者又は労働組合との間に賃金の一時的遲払は止むを得ないとする了解が成立し、その為被告人等に賃金支払の義務がなくなつたものとは記録上認められないから、被告人の原判示行為が仮令公序良俗に著しく反しなかつたとしても、所論のようにその違法性が阻却せられる程度のものであつたとは認められない。労働基準法第一二一条第一項本文に所謂事業主のために行為した代理人中には法人の代表者をも含むものと解するを相当とする。蓋し同条項に所謂事業主中には法人を含むことは同条但書によつて明白であり、純粹な代理人、使用人その他の従業員が行為した場合に事業主に対して罰金を科するのに、純粋な代理人よりも更に会社に密接している代表者が行為した場合に事業主を罰しないのは同条に現れた労働基準法の精神に反するからである。同条項但し書が法人の代表者に違反の防止措置を認めているのは代表者以外の者に違反行為のあつたことを前提とするものと解するを相当とし、代表者に違反行為があつた場合には、その違反の防止措置は事実上考えられないから、かかる場合は法が当然予想していないと解すべきである。自己の違反行為を防止するのは矛盾であるという単なる論理的帰結から推して、法人の代表者の違反行為を罰すべき前示法理上の根拠を否定するのは当らない。同条第二項は広く事業主が行為者として罰せられる場合を規定したものであるから、法人の代表者に同条項所定の行為があれば、矢張り直接の行為者として罰せられるのは当然であり、そのために事業主たる法人の代表者に当然当該事業の労働者に関する事項について同法第二十四条其の他に違反する行為があつた場合を罰すべき理由は毫も解消せらるべきものではない。原判決の擬律は正当である。論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 佐伯顯二 判事 久礼田益喜 判事 武田軍治)

弁護人高瀬太郎の控訴趣意

第一点原判決は労働基準法第二十四条、第百二十条、第百二十一条の解釈適用を誤つた違法があり破棄を免れないと信ずる。

原判決は、被告人塩原禎三は、昭和十五年四月五日から昭和二十四年五月二十七日まで被告会社の取締役社長として同会社の業務一切を統轄執行して居たものであるが、被告会社の労働者に対する賃金支払日は毎月二十五日であるに拘らず被告人塩原禎三は被告会社業務に関し判示第一乃至第四記載の各行為により被告会社労働者に支払ふべき賃金を支払はなかつたものであるとの事実を認定した上、被告人塩原禎三の判示第一乃至第四の各行為は夫々労働基準法第二十四条第二項本文第百二十条第一号〈以下省略〉に該当する旨判示しているが被告人の右判示第一乃至第四の行為は左の理由により労働基準法第二十四条第二項第百二十条に該当しないものと解する。

一、労働基準法第二十四条は本質的には賃金支払方法に関する規定であると解すべきであり、末広厳太郎氏は法律時報第二〇巻第三号に於て労働基準法解説として、労働基準法直接の目的は法令又は労働協約に別段の定めがないにも拘らず賃金を通貨以外のもので支払うこと、直接労働者に支払わないこと、賃金の一部を不法に控除して全額を支払わないこと、賃金を定期に支払わないことを禁止する等支払方法に関する弊害を防止するにあるから、単に賃金の支払が遅延したことだけを理由として使用者に刑事制裁を加えることが本条の精神でないと述べて居られる。

然しながら賃金支払方法に関する規定は不可分的に賃金支払債務の不履行に関係を持つものであり、労働基準法第二十四条第二項本文は、賃金支払期日の決定のみならず其の履行方法をも同一の規定に包含するものと解すべきであることを否定的に解するのではないが、本件事案の如く其の履行については後述の通り会社の代表者が最善且最高度の努力を為し違反行為の防止若しくは其の是正につき必要措置を講じた場合には其の代表者は違反の行為者として処罰せらるるものと解すべきではないのであつて、其行為者として処罰せらるるのは上記の必要措置を講じなかつた場合に限らるる趣旨と解すべきことは労働基準法第百二十一条第二項の反面解釈として毫も疑のない処である。

右の趣旨は本件と略々同一の事例について昭和二十五年十一月十四日新宿簡易裁判所が電元工業株式会社並に同社代表取締役に対して言渡したる無罪の判決に判示せらるる処である。

又使用者が社会通念上最善の努力を尽したに拘らず賃金を遅払した場合、即ち何人がその地位に立つも賃金の完配は期待できなかつた場合には、たとへ労働基準法が労働者保護の最低基準を定めて労働者を保護せむとするものであつても、使用者に不可能を強いるものとは考えられないから一般刑事の法理と同様使用者が社会通念上為すべき最善の努力を傾倒し何人がその地位にあつても賃金の遅払は已むを得なかつたであろうと認められる場合には、本条違反の違法性は阻却されるものと解すべきである。

右の趣旨は本件と略々同一の事例について昭和二十五年十月十六日名古屋地方裁判所が大同製鋼株式会社並に同社代表取締役及び同社監査役経理部長に対して言渡したる判決に判示せらるる処である。然して本件に於ては左に述べるが如く前掲新宿簡易裁判所及び名古屋地方裁判所の判決に判示せらるる通り被告人に於て賃金支払を為さざることに期待可能性は存立せざりしものと解さるるのであつて右刑法上の違法性阻却の事由に認めずして為された原判決は違法であり破棄をまぬかれないものと信ずる。原判決は本件賃金不払を生ずるに至つた過程に付、昭和二十三年初頭頃からの経済界の状況及び被告人塩原禎三の会社経営、賃金対策等の処置延いては被告会社の経理状況を綜合観察すると本件賃金不払が已むを得なかつたものとも其の支払が不可抗力に基く不能のものであつたとも認められないし被告人塩原禎三に本件賃金支払を期待することが不能であつたと迄云ふことは出来ない、と判示しているが被告人が昭和二十三年初頭頃から採つた措置は其の時期時期の状況より判断すれば経営の掌に携る者として適切な措置であつたのであり、もとより被告人のみが単独強行した措置でもなかつたのである。客観的な情勢は多分に影響された事前措置を爾後に於て判断するに際し、其の客観情勢を無視して判断することは条理に反するものであり、之に対して刑事責任をも追求することが許されるのであるならば、変転する経済状勢下に於ける経営といふことは到底期し得ないのであつて、斯かる事前措置について迄刑事責任帰責の因果関係を追求することは許されないものと解すべきである。

即ち被告人について其の事前措置につき刑事責任はないものと言はなければならない。当時の客観情勢は経済九原則をめぐり混沌たるものがあり金融は漸次逼迫の傾向にあつたのであるが会社は其の主工場たる品川工場の半ばを戦災に依り失つた事及び其の製品が国民保健上国家的に其の増産を要請されていた部門が極めて多かつたのであつて例えばワクチンの如きは生産指示に依り原料の割当を受けて居つたのであり、会社企業が其の操業当時より単に利潤の追求を目的とせず医薬業界に貢献するという目的の下に終始不断の技術の研究が為され操業が続けられて居りしかも当時すでに一部増産計画進捗の途上にあつたのであつて斯様な場合に於けるその計画を打切るということはむしろ採るべき策でないことは容易に考えられたのである。又当時の経済界の状況は一方に於ては未だ戦時破壊施設を復旧し増産を図という面に指向されており金融面に於ても当時は国家的に復興金融金庫等に於て尚相当額の融資が計画されていたのであつて当時の経営者として其の措置をとつたことは当然の事と言えたであろう。

次に又十一月に賃上げを為した事もスライド制を採用して居つた事からして已むを得なかつた措置と言い得ようし又十二月越冬資金要求に応じた事についても後から考えれば其の措置に対し客観的には或は批判の余地はあろうが組合側に於ては会社の経営が極めて困難なる事情の下に其の要求が承諾されるものなる事を確認し更に経済三原則が指示されている折柄会社経営特に経理に及ぶべき圧力を認識し其の結果起る事態に対しては協力的態度を以て会社の協議に応ずることの条件が附せれていたのである。然して以上の条件の下に於ては人員整理を行わぬという条件が附されたのであつた。即ち会社も組合も会社経理上重大な問題が起る場合には、共々これに対して善処する事が約束されていたのであり、この条件の下に於てこそ会社は組合の要求に応じ又会社は其の事態が発生した場合の組合の善処に信頼して人員整理を行はぬ事を条件としたのである。即ち会社は組合との間の信義則に基き人員整理をしないという約束をしたのであつて、労資協調の観点から際直ちに人員整理を為す事は信義上之をなし得ない事情にあつたのである。

更に又当時の状況下に於ては金融の都合さえつけば必ずしも人員整理をしなくとも賃金遅払の事態が避け得られると云うことも予見し得たのであつて、当時世間に於ては未だ人員整理は一般に行われていなかつたのであり、人員整理が行われ始めたのは二十四年三月頃からのことであつたことを併せて考えれば右の措置は決して不当ではなかつたものと云い得よう。

然して会社の経理状況は一般経済界の金融の逼迫の影響と、加えて会社製品の公定価格の引上げが原料公定価格の引上げに伴わず遅延した為、欠損は急激に増大するに至つた。且又前述の通りの事情下に賃上げの要求に応ずるの巳むなきに至り越冬資金の要求と加えて金融の逼迫下に経営は真に苦境に陥り、賃金遅払事態発生の已むなきに立ち至つた。此の間にあつて被告人の為したすべては如何にして会社の存続を前提として賃金支払の確保を図るかに尽くされていたのであつて被告人自ら資金の獲得、賃金債務以外の債務償還の延期売掛代金の回収所有不動産の売却処分等に付ては能う限りの努力を為したのであつて、当時の客観的経済状態に徴して仮令何人が此事態収拾に当つたとしても到底賃金遅払の防止は期待し得ない状況にあつたものと謂い得べく即ち被告人に対し客観的に遅払の事実発生を回避することは到底期待し得ない状態であつたことは郷司浩平他各証人の言、並に其他全証拠によつて認められる処である。賃金支払の為に会社の存続を前提とすることについては組合に於ても了承した処であつて蓋し会社の存続を前提とせざれば仮令一時的に賃金の支払があつたとしても、同時に会社の破滅が招来され、労働者にとつては即時永久的生計の道が杜絶さるるに至つたのであるから、之が存続を図ることは許さるべきであり、且つ会社存続の為の最少限度の支出については逐一組合の了承を得て支払を為していたのであつて此の事を以て遅払防止の為の最善の努力に欠くる処ありとは解されないのである。

二、更に又違法性阻却の事由として左の主張を開陳する。

本件に於ては前述の通り会社と組合との間に、賃金遅払の事態発生以前に於て予めかかる事態が発生した場合に双方が善処する旨の約束が為されていたのであつて、このことは被告人が東京地方検察庁に提出した上申書に詳述されているのである。即ち本件賃金遅払事態発生後、労働者に於ては、生活困窮の為不満はあつたとしても其の已むを得ざる事情を認め、且つ会社の存続延いては労働者自らの将来の賃金確保による生計を慮り、此の場合一時的の賃金支払遅延は已むを得ない措置であるとの了承があつたと解されるのであつて、其の了承の下に労使双方共通の利害基盤に立脚して協力善処したことは其の措置が労使間の信義に合致したものであることを意味するものなる限り、以て公の秩序善良の風俗を害したものとは認められないのである。然して刑法上の一般理論として被害者の承諾は行為の危険性を欠くに至る場合犯罪の成立を阻却するのであつて其の基準は其の事実が公の秩序善良の風俗に反するや否やによるべきものと解されるのである。

労働基準法第二条には「労働条件は労働者と使用者が対等の立場に於て決定すべきものである。」旨の規定があり、右は労働者と使用者との対等の原則を示すものであり同時に労働者の意思を尊重すべきことが規定せられているのである。近時の労働判例に於ても例えば就業規則の変更は労働基準法第九十条に於て当該事業場に労働組合のある場合単に其の労働組合の意見を聽けば足る旨規定されているが裁判事例に於ては、労働条件に関しては同法第二条の趣旨よりして組合と協議をなすに非ざれば有効に変更されない旨の決定がなされているのであつて、しかく労働者の意見は重視されているのであり、本件の場合の如く使用者が社会通念上の誠実を尽して賃金の支払に努力したるに拘らず、如何としても支払遅延を免れ得ざる事態に於て、労働者が使用者の已むを得ざる事情を認めて弁済期の遅延を事実上承諾するに至つた事実のあつたことは、労働者の意思を尊重する労働法の精神よりして以て公の秩序を害するものとは認め難いのである。本件の場合に於ては賃金遅払の事態発生に際し団体交渉に於て労使双方協議の上経営存続の為に必要な最少限度の支出を労働者に於て認め、以て仮令遅払になるとも会社操業の継続を図ることによつて将来の賃金支払の確保が期されたのであつた。

原判決は証人吉川次郎の供述を引用し右の事実を認めていないのであるが同証人は「給料は何日何日支払うということは団体交渉で決つた」と述べて居り又「其の席で相談して決めた」と述べている。尚「給料の定期的に支払はれないことは認めはしない」とも述べて居るが、団体交渉が給料支払の為に連日継続して行われて居り且つ給料の一部宛が双方意見の一致によつて分割支払われていたという事実は事実上給料の遅延による分割支払が認められていたことを示すものと看做し得るのである。もとよりかかる遅払は労働者の本旨とする処でないことは当然であり、其の意味で承認しないといふ意味に解されるに過ぎないのであつて事実行為としては組合は其の有効支払たることを承認したものと看做し得るのである。即ち本件については行為の危険性を欠くものとしても亦犯罪の成立が阻却されるものと解するのである。

三、原判決は被告人に対する罰条として労働基準法第百二十条を適用しているが、被告人に対しては罰条としては同法第百二十一条第二項を適用すべきであり、此の点に於ても原判決は法令の適用を誤りたる違法があり破棄を免れないものと信ずる。

労働基準法第百二十一条第二項には法人の代表者即ち本件被告人が処罰の対象となる場合が明記されて居り、又同条第一項には法人たる事業主が処罰の対象となる場合が明記されていることから解すれば、基準法第百二十条第一項は次条第百二十一条との関連解釈上法人たる事業主及び法人の代表者たる事業主以外の者に依り違反の行為があつた場合の規定たるものと解釈されるのである。

即ち法人は第百二十一条第一項に依り、法人の代表者は第百二十一条第二項に依り処罰の対象たり得べく第百二十条に依つては処罰の対象たり得ないものと謂い得よう。依つて原判決が法人の代表者については第百二十一条第二項に明文上の規定あるに拘らず之を無規して第百二十条を被告人に適用したことは法令の適用を誤つたものと解せざるを得ない。前掲新宿簡易裁判所の判決は前掲の通り第百二十一条第二項の裏面解釈を判決理由に示しているのであつて、法人の代表者については第百二十一条第二項を適用すべきであるとの趣旨は窺われるのである。

同判決は法人の代表者たる事業主が第百二十一条第二項の行為者に該当しない場合、即ち違反の防止若しくは其の是正につき必要措置を講じたる場合には其の代表者は違反の行為者として処罰せらるることはないと判示しているのであつて、このことは法人の代表者については第百二十条第二項の適用あることを判示したものに他ならないのである。

法人の代表者については第百二十条第二項が法人の代表者たることを明文に示し且つ其の行為の態様をも具体的に規定していることは法人の代表者については第百二十一条第二項の規定を適用すべきことを示し同時に第百二十条の規定の適用の排除を示すものであり、原判決が被告人に対し第百二十条を適用したことは法令の適用を誤りたる違法があるものと解せざるを得ないのである。更に又原判決は原審被告会社に対して第百二十一条の解釈適用を誤つたものであり、此のことは前述第百二十一条第二項の解釈適用を誤つたこととも関連するものであり同一の条文に関する原判決の法令の適用の誤りとを示すものであるから左に附加陳述する。

原ち原判決は、労働基準法第百二十一条第一項本文の代理人中には法人の代表者を含むものと解するとしているが労働基準法第百二十一条に於ては事業主なる字句が二様に区別されているのである。即ち同条第一項本文に於ける事業主は法人の場合に於ては法人そのものであるが同項但書及び第二項に於ける事業主は法人の場合は其の代表者となつて居り同条の文理解釈上第一項の事業主(法人)のために行為した代理人、使用人其他の従業者の中には法人の代表者は含まれないものと解される。若し然らずとせば法人の代表者が第一項本文に於ては此の法律の違反行為をした者となり、第一項但書に於ては違反の防止に必要な措置をした者となる場合が生ずるので、即ち法人の代表者が一名の場合に於ては同一人格の者が一方に於て自己自ら行為し他方その防止措置を講ずるという全く矛盾した結果が招来されることを認めざるを得ない結果になるからである。然して此のことは本件と略々同一の事案に対し昭和二十四年十二月八日名古屋高等裁判所及び昭和二十四年九月八日富山地方裁判所が朝日興業株式会社に対して言渡したる判決に於て、「けだし行為者を罰する外法人を罰するには特に法人を罰する旨の両罰規定を必要とするが前示第百二十一条第一項本文の両罰規定は之を他の法人に於る両罰規定に比べると「法人の代表者」なる字句が省かれていること、而して法人の代表者が法人の代理人、使用人其他の従業員の中に包含されてないことは他の両罰規定の用語例に於て法人代表者と法人の代理人使用人其他の従業者とを併記しているものもあることと普通には代理人と代表者とは其意義を区別されていることにより明かである。もし法人の代表者も法人の代理人中に包含されているものと解すると法人の代表者は本文の違反行為者であると同時に同但書の違反防止者の資格をも兼用することになる、監督者と被監督者との資格を兼ぬる矛盾したことになる之は許されない解釈である」と判示されている。

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